結び目とは3次元球面内に埋め込まれた閉曲線のことであり、デーン手術・分岐被覆については3次元多様体の基本的な構成方法として国内外で様々な研究が行われてる。この研究ではデーン手術・分岐被覆の幾何学的な扱いをとおして結び目や3次元多様体の位相的性質を調べることを目的とし、本年度は主に次の2点について成果を得た。 補空間が本質的トーラスによって分解される結び目を分岐集合とする被覆空間の表示をデーン手術の立場から研究し、被覆空間のキャッソン・ウォーカー不変量と分解成分の多項式不変量の係数との関係を明らかにした。この研究の応用として、アレキサンダー多項式が自明な結び目に関する分岐被覆空間の不変量の性質と実現問題の考察、強n-自明結び目のアレキサンダー多項式およびジョーンズ多項式の特殊値J^1(-1)を完全に決定した。以上の研究結果については国内で開催された研究集会等において発表を行った。 同相な多様体を生成するデーン手術を許容する結び目の族については多くの代数的不変量は共通の性質を有するが、本研究においてO-手術によって同相な多様体を生成する結び目の無限族の例を構成し、それらの結び目K_mに関してジョーンズ多項式の特殊値および分岐被覆空間のキャッソン・ウォーカー不変量をパラメータmに関する1次式で表した。この研究についてはメキシコで開催された国際会議において発表を行った。なお、この研究では計算機上での数値実験が必要不可欠であった。
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