平成17年度の前半は、主として、大学院レベルでの教員養成に関して研究を進めた。 アメリカでは専門職教育としての教師教育を実現する方策として、大学院レベルで教員を養成するということが様々な年代において繰り返し提唱されてきた。しかし、そうした形態のプログラムに移行した大学が数多く存在する一方で、未だに主流の形態とはなりえていない。報告者は、大学院レベルでの教員養成をめぐるこうした現状の背景要因を追究することが、専門職教育としての一環としての教師教育を探る上で不可欠であると考え、次の観点から研究を進めた。第一に、アメリカで大学院レベルでの教員養成が提唱された経緯について時代区分を行いつつ明らかにし、プログラムの位置づけを整理した。第二に、大学院レベルでの教員養成をめぐるアメリカでの議論と研究成果を明らかにした。第三に、教員養成を大学院レベルに移行した大学を事例として取り上げて、改革の背景、プログラムの特徴、効果について分析し、大学院レベルでの教員養成の意義と課題の考察を試みた。 また、8月以降は、アメリカのバージニア大学において研究を行い、教師教育の理論と実践に関する研究を深化させる機会を得た。現在は、同大学の革新的な教員養成プログラム(5年制の教員養成プログラムと2年制の大学院レベルのプログラム)と現職教育プログラムの現状について、プログラムを履修する学生の調査と大学内の意思決定過程に関する調査から分析を進めている段階にある。 今後は、これまで実施してきた他大学のプログラム改革およびプログラム内容の分析を踏まえて、専門職教育としての教員養成・現職教育プログラムの内容と組織的条件、効果についてさらに精緻に明らかにし、日本における改革の可能性について追究する予定である。
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