平成16年度前半は、1999-2001年の現地調査で収集したビルマ古典歌謡の録音資料のデータベース化(アナログ音源60分テープ約300本のデジタル化と編集)を行った。また、同時期に収集した文献や楽譜等の資料の分析を進め、博士論文の執筆を進めた。 2004年11月〜12月には、現地の国立図書館(ヤンゴン市)で、これまで閲覧が許可されなかった貝葉と折り畳み写本の調査の許可を得て、科研費にて調査・撮影を行った。博士論文で中心的に扱う18-19世紀の音楽家ミャワディ・ミンジー・ウー・サ(以下ウー・サ)の歌謡集の貝葉写本(写本年不明)と古典歌謡集として最大の"Thabba Gitekkama Pakathani Jan"(貝葉)のデジタルカメラでの撮影を行った。その他、『竪琴奏法』等の写本や歌謡集の写本を発見し、これについても撮影を行った。国立図書館の協力を得て撮影した画像は、CD-Rの形で同図書館に寄付した。 2005年2月〜3月には、大学中央図書館(ヤンゴン大学)と歴史研究センター(ヤンゴン)にて、資料調査を行った。大学中央図書館では、上記ウー・サの歌謡集の貝葉写本の異本(1902年)の撮影を行い、また、これまで貝葉の形での存在が知られていなかった歌謡集"Mahagita Medani Jan"を発見し、これについても撮影を行った。その他、歌謡関係の貝葉、折り畳み写本数点についても撮影を行った。歴史研究センターでは、やはりこれまで存在が知られていなかった上記ウー・サの歌謡集の写本の異本(1883年)を発見し撮影した。これはウー・サの歌謡集の写本としては、知りうる限り最古のものであり、報告者の博士論文の貴重な資料となる。 報告者の調査を受けて、ミャンマー文化省ではウー・サの歌謡集の写本の刊行化が進められることとなり、報告者の撮影した画像をCD-Rの形でミャンマー文化省へ寄付した。
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