平成17年度は、自閉性障害児、健常児を対象として以下の3点において研究を実施した。 1、コミュニケーション獲得条件の検討 (1)動作模倣:自閉症児15名を対象として、前年度から継続的に系統的な動作模倣の評価、指導を実施した。評価の結果、自閉症児において、実際の人と、静止画の動作の模倣で遂行パターンに違いがあることを明らかにした。(2)共同注意:自閉症児において、実際の人と、静止画刺激における視線理解、また、静止画における視線と矢印の方向理解を比較した。静止画条件において実際の人条件よりも遂行が低下し、静止画において、矢印と視線に動きを付与した場合、視線条件においてのみ遂行が上昇するという結果が得られた。よって、自閉症児における視線理解の困難さは、社会的手がかりの理解の障害ではなく静止画から運動を知覚する困難さであることが示唆された。(3)報告行動の獲得:自閉症児3名を対象に、自分が見たものを報告する行動の獲得を検討した。言語行動の機能に焦点をあてた指導の結果、報告行動が獲得され、異なる場面、人にも般化を示した。成果は、第31回行動分析学会年次大会(2005年5月、シカゴ)にて発表した。 2、早期療育の親子相互交渉への効果の分析: 親子相互交渉のデータベース化を継続した。また、療育開始時と療育開始後2年目の親子相互交渉の分析を行った。結果は2005年国際行動分析学会(2005年11月、北京)にて発表した。 3、光トポグラフィによる脳機能測定: (1)健常乳幼児を対象として、対乳児音声と対成人音声、また、話し手が自分の母親と他児の母親である条件で比較を行った。さらに、母子が共同注意を行っている状態の脳機能を計測した。(2)自閉症、高機能自閉症児11名を対象に、音韻、対乳児音声がどのように処理されているかを検討した。これらの結果は、知能検査などの測度と合わせた検討を行っていく予定である。
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