原子数が精密に制御された酸化チタンのクラスターを創製する方法として、精密金属集積型デンドリマー内に個数を制御して配位できるチタン錯体の探索を行った。精密に金属集積を制御するためにはイミンと1:1で錯形成の進行するチタン錯体が必要である。チタン錯体は6配座をとりやすいことが知られている。そこのことから、5配座のチタン錯体であるアセチルアセトナト三塩化チタンを用いたところイミンと1:1で錯形成が進行する。このアセチルアセトナト三塩化チタンはフェニルアゾメチンデンドリマーに段階的に集積された。 精密金属集積型デンドリマーをホール輸送層とした有機EL素子の高効率化をデンドリマー層の薄膜化より達成した。デンドリマーのシェル効果は抵抗として働いていると考えられ、薄膜化することで素子の抗が減少し、駆動電圧が大幅に減少した。世代が上昇するに従って仕事効率が良くなっており、シェル効果はホール輸送よりも発光層から陽極への電子の通り抜けの防止に対して働いていると考えられる。また、デンドリマーへの塩化錫の錯形成は電荷輸送特性の向上に寄与するが、ホール輸送と電子の通り抜けの両方に寄与するため、仕事効率が最大となる添加量は1等量以下であるということが判明した。 精密金属集積型デンドリマー内の電子密度勾配が電子ベクトルを制御し、逆電子移動が抑制されると予想し、デンドリマーを用いた色素増感太陽電池への作製を行った。デンドリマーの世代が増えるに従って開放電圧は上昇した。これはシェル効果がホール輸送よりも電子の通り抜けの防止(ここでは逆電子移動)に対して働いているためだと考えられる。また、逆電子移動での電子の受け手である三ヨウ化物イオンとイミンが錯形成をすることをJobプロットから明らかにした。すなわち、世代が上昇し内層のイミンの塩基性度上昇することで三ヨウ化物イオンとの相互作用が強くなり、逆電子移動が抑制されることが示唆された。
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