分子生物学による細胞内現象に関する知見、近年急速に発展しているハイスループットな手法による網羅的データ、そして100以上にも上るコンプリートゲノムの情報の蓄積により、"ポストゲノム"の時代の課題は、このような還元論的に培われた知識を統合し、その動的なシステムとしての性質を理解することであると言えよう。生命現象という複雑な系の要素及び非線形要素間相互作用の総和を理解するにはコンピュータシミュレーションを用いた構成論的システムバイオロジーのアプローチが不可欠であるが、この為に必須であるモデリングは現在非常に煩雑な人手による作業に依存しており、また様々な生命情報を統一的に扱える作業環境が存在していないことも計算細胞生物学が発展する上で大きな障害となっている。本研究ではまず汎用的なバイオインフォマティクス解析環境であるG-language Bioinformatics Environmentを設計・実装し、次に、計算生物学の出発点となるゲノム情報の正確さによる解析自体の感受性を定量的に判別する手法GPACを開発した。その上でこれら解析環境の上で、ゲノム情報に基づいた代謝パスウェイモデルを自動生成するGEM Systemを開発した。さらに、得られた複雑なパスウェイ情報を効率よく理解するための可視化ツールも開発した。
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