私はこれまでに、新規exonであるexon1βを含むヒト血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)の新しいtranscript variantを同定し、その転写が転写因子E2F-1によって制御されることを明らかにした。そこで新規ヒトPDGFR mRNAの機能解析を行うため、ホモロジーサーチとRNAの二次構造予測をもとにRNAiベクターを設計し、ヒト骨肉腫MG-63細胞を用いてexon1βノックダウン細胞株を構築した。構築したノックダウン細胞について足場非依存性増殖を指標とした細胞癌化に与える影響を検討した結果、ノックダウン細胞はMG-63細胞が示す約半分程度しか足場非依存性増殖を示さなかったことから、新規ヒトPDGFR mRNAが細胞癌化に関与している可能性が示唆された。 また、exon1βのノックアウトマウスを用いた新規PDGFR mRNAの機能解析を行うため、そのマウスホモログの同定と転写制御機構解析を行った。5'-RACEおよびRT-PCRにより、報告されている転写開始点下流+661から+1355に位置する694bpのexonをマウスexon1βとして同定した。+192/+1063領域をクローニングしレポーターアッセイを行った結果、+192/+1063領域の転写はE2F-1によって約10倍活性化された。EMSAにより、+192/+1063領域に見出された3カ所のE2F結合様配列の内+608/+615、+711/+718の2カ所でE2F-1との結合が検出された。さらに、ChlP assayによりE2F-1と新規PDGFR mRNAマウスホモログのpromoterとのin vivoにおける結合が確かめられた。これらの結果から、新規マウスPDGFR mRNAもヒトと同様にE2F-1によって制御されていることが強く示唆された。
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