我々はこれまでに、従来報告されているヒト血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のmRNA(PRmRNA1)とは異なった5'非翻訳領域(exon1β)を有する新しいPDGFR mRNA(PRmRNA2)を見出した。また、PRmRNA2はPDGFR遺伝子のintron1として報告されている配列中から転写され、その発現は転写因子E2F-1によって制御されていることを種々のin vitroアッセイ系を用いて示した。そこで細胞にE2F-1を入れるとPRmRNA2の発現が本当に上昇するかどうかを、ヒト胎児胚繊維芽WI-38細胞にアデノウイルスを用いてE2F-1を導入することで検討した。その結果、E2F-1の発現によりPRmRNA1の発現レベルは変化がなかったのに対し、PRmRNA2の発現レベルは約3倍上昇した。このことから細胞内でもPRmRNA2の転写がE2F-1によって制御されていることが明らかとなった。 PRmRNA2の機能解析を行うため、PRmRNA2を特異的にノックダウンするexon1βをターゲットとしたsiRNAの開発を行った。種々の報告をもとに当研究室で構築されたプログラムを用い、効率よくノックダウンできると思われるsiRNAを2種類設計した。ヒト骨肉腫MG-63細胞に設計したsiRNAを導入し、PRmRNA2の発現量をリアルタイムPCRにより定量した。その結果、設計した2つのsiRNAのうち1つのsiRNAでPRmRNA2の発現が特異的にノックダウンされた。現在は設計したsiRNAが細胞周期に及ぼす影響を検討している。また、設計したsiRNAの配列をもとにRNAiベクターを設計し、PRmRNA2のノックダウン細胞を構築している。
|