研究概要 |
アルケン類へのアミン類の付加反応であるハイドロアミネーションは、有用物質であるアルキルアミン類を合成する強力な手法の一つである。特に遷移金属錯体触媒による穏和な条件下での、位置選択的ハイドロアミネーションの実現は、近年大きな注目を集め活発に研究がなされている。本研究者は今年度、これら遷移金属錯体によるハイドロアミネーションの反応機構の解明を試み、これまで知られていない新規遷移金属錯体の合成・単離に成功した。エーテル系溶媒中、加熱条件下、スチレン誘導体とアルキルアミン誘導体に対し、触媒量のRu錯体,ビスジフェニルフォスフィノアルカン、ならびに強酸を作用させると、アンチマルコフニコフ型ハイドロアミネーションが進行することが知られている。そこでまず、この反応系における反応中間体の同定ならびに単離を目的に、各触媒成分ならびに反応基質との反応を、種々の条件下、リンNMRによって観察した。その結果、触媒成分(Ru錯体、ホスフィン誘導体、強酸)と過剰量のスチレンのTHF溶液を加熱したところ、原料であるホスフィン誘導体のピークが消失し、66ppm付近に新たなピークが主成分として生じることを見いだした。またこの生成物の単離にも成功し、種々のNMRスペクトル、またX線結晶構造解析により、その構造を、これまでに報告例のないタイプのルテニウム錯体であると決定することができた。今後、この新規錯体の反応性について詳細に検討していく予定である。
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