甲殻類血統上昇ホルモン(CHH)族ペプチドの機能を明らかにするために、クルマエビのCHHと脱皮抑制ホルモン(MIH)を対象として、蛍光標識したホルモンの調製を試みた。まずはじめに、これらのホルモンの機能に関与していないと考えられるN末端アミノ基を特異的に標識する方法の確立を目指した。 N末端アミノ基の修飾には、Transamination法を用いた。この方法では、N末端アミノ基を化学的にカルボニル基へと変換し、カルボニル基に特異的に反応する蛍光プローブを用いることによって、タンパク質のN末端のみを特異的に標識することができる。まず、この反応に用いる蛍光プローブを化学合成した。その際に、プローブ内にビオチン基を導入することによって、標識されたタンパク質のみを簡便に精製できるようにした。この方法を用いて、MIHを効率よく標識することができた。またこの方法は、ペプチドホルモンのような小さいタンパク質だけでなく、抗体のような大きなタンパク質も、変性させることなく標識することが可能であった。 続いて、蛍光標識したMIHを用いて、クルマエビ生体内の受容体分布の解析を行った。しかしながら、クルマエビ自身の自家蛍光が強く、解析が困難であった。また、クルマエビは季節による生体リズムの変動、値段の変動が激しく、通年の安定した実験材料の入手が困難であることが予想されたため、実験材料を世界的によく研究されているblue crabに変えることにした。 Blue crabのMIH遺伝子のクローニングを行い、現在、MIHの大量調製を目指して、大腸菌を宿主とした発現系の確立したところである。
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