カチオン性のアルキルトリメチルアンモニウム塩あるいは非イオン性のトリブロック共重合体を水およびエタノールに溶解し、得られた出発溶液をシリコン基板上に塗布・乾燥することによって構造鋳型材の薄膜を合成した。その後、薄膜を90〜180℃にてテトラエトキシシラン蒸気に接触させることで、シリカと構造鋳型剤の複合したメソ構造体薄膜が得られることを明らかにした。 通常、メソポーラスシリカはシリカ源と界面活性剤などの型剤からなる溶液から析出する。一般的に、メソポーラスシリカは粉末で合成した場合、あるいは多孔質支持体内に合成した場合は、比較的高い安定性を示すが、薄膜状にすると、安定性は著しく低下し、構造鋳型材の除去に伴って周期性が低下する。これに対して、本研究で開発した新規合成法は、高温条件下で気相からシリカを析出させるため、高い構造安定性を有するメソポーラスシリカ薄膜が合成可能となった。また、シリケート、触媒、構造鋳型材を含む溶液を保存する必要がなく、工業的に適した手法であると言える。 合成した薄膜はX線回折、Scanning electron micrograph (SEM)、Transmission electron microscope (TEM)及び窒素吸着・脱着等によつて構造解析を行った。アルキルトリメチルアンモニウム塩を用いた場合には、2.5nm径のチャネル状細孔が基板に対して平行に配列した構造であることを明らかにした。トリブロック共重合体を用いた場合には、'膜面に対して等方性を有する細孔構造(細孔径7nm)であることを明らかにした。 これらの構造鋳型材を用いて、気相から合成したメソポーラスシリカ薄膜は、高い比表面積を有し、極めて規則性が高く、半導体用層間絶縁膜としての用途、さらには触媒、吸着分離剤など様々な分野での応用が期待できる。
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