研究課題
これまでの本申請者の研究によって、今まで十分に明確な区別ができていなかった励起CT錯体とエキサイプレックスが異なった反応性、立体選択性を示す化学種であるということが、キラルプローブを用いたジアステレオ区別反応の検討により明らかとなってきた。しかしながら、励起モードを変えるだけで完全に異なった立体選択性を与える本系の詳細な反応機構の詳細に関しては未だ明らかとなっていなかった。そこで本年度は、レーザー分光を用いて両励起モードにおける励起種の違いについて検討することにより、分光学的にも二つの励起錯体を区別し、反応機構を明らかにする事を目的とし、さらには他の系にも同様の検討を展開する事とした。このように、励起モードを変えるだけで全く逆の立体選択性を与えるような反応機構を分光学的に検討するために、本年度は3ヶ月にわたり自ら渡欧し、既に研究交流のあるValencia Politecnica大学のM.Miranda教授の指導下、各種レーザー分光機器を用いて両励起モードにおける励起種の寿命・反応性の違いについて検討を行った。また、励起状態における電子密度分布などをより詳細に検討し、両励起錯体の構造・エネルギー状態の違いを明らかとする事により、実際の反応結果と合わせて包括的に議論した。さらに生成物であるジアステレオメリックな[2+2]環化付加体を単離してX線結晶構造解析を行った。このような実験を行うことで、スチルベンとフマル酸エステルの[2+2]光環化付加の系において、分光・反応・計算結果をすべて包括的に検討する事によって、励起CT錯体経由の不斉光化学を新たな生成物キラリティー制御手段として確立した。また結果はリストに示すような数報の国際誌への報告とし、また、全体をまとめた比較的総合的な論文を執筆中である。
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