本研究では、マクロファージによるアポトーシス細胞の貧食に重要な役割を果たしているMFG-E8というタンパク質の発現誘導機構の解明を目的とした。MFG-E8は、無刺激状態の腹腔在住マクロファージには発現していないが、チオグリコレート刺激によって腹腔に滲出してきた活性化マクロファージでは強い発現が見られる。全身性にGFPを発現するGreen mouseを用いた骨髄移植実験より、腹腔滲出マクロファージは腹腔在住マクロファージが増殖したものではなく、骨髄細胞から誘導されたナイーブなマクロファージ前駆細胞が分化したものであることが確認された。そこで、骨髄由来のマクロファージ前駆細胞を活性化し、MFG-E8の発現を誘導するような因子がチオグリコレート投与時に腹腔内に存在していると考え、その因子の同定を試みた。まずチオグリコレート投与後24時間目に腹腔から回収したperitoneal exudates cells(以下PECと記す)をin vitroで培養し、その培養上清を用いて骨髄細胞を刺激した。すると、骨髄細胞の一部はマクロファージに分化すると同時にMFG-E8の発現が上昇した。すなわちPECからMFG-E8の発現を誘導する因子が分泌されていると考えられた。この活性を担う因子は、PECの培養上清を熱処理したり、タンパク質分解酵素で処理する事によって減少することから、タンパク質である事が示唆された。この因子を同定するためにカラムクロマトグラフィーを用いた精製を試みたが、PEC上清中の目的因子の量が非常に微量であるためこの方法での精製は困難であった。そこで、PECからcDNAライブラリーを作製し、COS7細胞に発現させ、その培養上清中のMFG-E8誘導活性を調べる事で目的の因子を同定することにした。現在スクリーニングを開始した所である。
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