研究概要 |
昨年度の研究で、ポルフィリンに含まれる水素・炭素・窒素・酸素同位体比のうち、分子レベル窒素同位体比の測定開発が、最も重要であることが示唆された。そこで、本年度は、GC/C/IRMSを用いたポルフィリン化合物の窒素同位体比測定法の開発を中心に、以下の研究を行った。 1.現在国内では、有機分子の窒素同位体比を正確に測定できる方法はまだ確立していない。そこでまずは、アミノ酸の標準試薬を用いて、オンライン窒素同位体比測定に最適なキャピラリーカラム・誘導体化法を検討した。現在までに、キャピラリーカラム:Ultra-2(長さ:25m,内径0.32mm,膜厚0.52mm)、誘導体化:イソプロピルエステル化-ピバロニル化(トリメチルアシル化)を用いた場合、一般的なアミノ酸(アラニン、グリシン、グルタミン酸など)については、約25ngNで±1‰以内での測定が可能になった。 2.クロロフィルなどのポルフィリン化合物は、その共役系の化学構造ためGCで溶出しにくく、また燃焼炉での酸化効率も非常に悪い。そのため、従来のGC/IRMSシステムでは、その同位体比測定は困難であった。しかし、GC/C/IRMSによる同位体比測定が可能になれば、20〜30ngN程度の超微量で、窒素同位体比が測定可能になる。そこで、ポルフィリン環の共役系を解列させ、GCでの分析を可能にすることを目的に、クロロフィル及びその誘導体のクロム酸酸化分解法(マレイミド化)を検討した。年度前半に、様々な反応条件で反応を行ったが、マレイミド化は出来なかった。そこで、年度後半に、筑波大学・野本助教授に反応を教わり、実際にマレイミド化に成功した。現在、これらの窒素同位体比測定法の確立に取り組んでいる。
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