研究概要 |
現在まで、ロシア連邦サハ共和国のホムス(口琴)や歌の伝承を調査し、人と音文化の関わりをレパートリーの継承、ジェネレーション差などを明らかにすることを通じて急激な近代化の只中にある地域の事例をもとに、その変容も含めて考察を行うため本年度は三度渡航し主として調査を行ってきた。以下にその調査内容を列記する。1.サハ共和国国立高等音楽院内に滞在しホムスの授業を参与観察。2.04年4月,6月とチュフチュール(サハで高齢者から子供まで最もホムスの盛んな村)でのホムスコンクール取材。3.ウセェフ(サハ人のお正月、馬乳酒祭)の集中的調査。以下の学校、地域のウセェフを調査。サハギムナジウム(サハ国立サハ人のみの小中高校)、音楽院、ハタス村、スンタール県、ハンガラスキー県(初代大統領の出身県)、ヤクーツツク市。4.同市、近郊、遠距離都市でのホムスの演奏技術の習得過程、レパートリー等を比較聴取。5.ヤクーツクでホムス演奏とジェネレーション差の関係を聞き取り調査。また筆者の研究は多角的で実践性も多分に含んだ音を通じた人のネットワークの試みである。そのため、実際のホムスの演奏指導を1年間音楽院講師のもとで受けてきた。その成果は11月のロシア連邦文化大臣音楽院訪問の際、12月にはモスクワのアカデミア・ムジキ・グネシネフでのコンサートのグループ横奏に反映。また05年1月には初代大統領専属ホムシストであった人物のコンサートを北海道大学博物館、標茶町塘路口琴研究会「あそう会」(著者も会員)他で行い、様々な演奏技法、鍛治屋による音色の違い、ホムスセラピーなど現在の人とホムスの関係を提示。このように広くサハの音世界を紹介する過程で、人と音が触れる場を創造しそこに立ち会うことを行ってきた。本年の調査、企画、実際の演奏技術の取得を通じて次年で研究発表、論文記述を多数行う予定。
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