小腸における難消化性糖類によるカルシウム(Ca)吸収促進作用を、ヒト小腸上皮細胞モデルCaco-2を用いて解析した。Caco-2刷子縁膜側への3種類の難消化性糖類[DFAIII(di-fructose anhydride III)、fructooligosaccharide、raffinose]の添加(0-100mmol/L)は、濃度依存的にparacellular Ca transportを高めた。一方、transcellular Ca transportには影響しなかった。また、これらの糖類を基底膜側へ添加した場合、paracellular Ca transport促進作用は非常に弱かった。これらの結果から、難消化性糖類とCaco-2細胞刷子縁膜に局在する何らかの分子との相互作用が、paracellular Ca transport促進に関与することが示された。 paracellular transportは、種々の細胞内シグナリングを介し、複合タンパク質tight junction(TJ)によって調節されている。そこで、各種のシグナリングブロッカーを用いて、DFAIIIによるparacellular Ca transport促進作用に関するシグナリング経路を解析した。DFAIIIを作用させたCaco-2細胞において、paracellular transportの上昇が認められたが、各種のシグナリングブロッカーは、DFAIIIによるparacellular transport促進作用に影響しなかった。これらの結果から、DFAIIIは、細胞内シグナリングを介さず、刷子縁膜の性質や状態の変化を引き起こし、paracellular Ca transportを促進していることが示唆された。 今後は、DFAIIIによるTJ分子の変化、刷子縁膜の性質の変化に関して解析を進める。
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