研究概要 |
TMVをはじめとするRNAウイルスはRNA複製複合体を宿主細胞内のオルガネラ膜上に形成することが知られている。そこで、試験管内複製反応用のBY2抽出液(BYL)中に含まれるオルガネラ膜成分を30,000×gの遠心操作によって除去し、その上清(mfBYL : membrane-free BYL)中でTMV RNAを試験管内翻訳することにより、複製複合体がオルガネラ膜上にターゲットされる前段階の複合体を蓄積させることを試みた。mfBYLを用いてTMV RNAを翻訳した場合、複製タンパク質は合成されたがRNA合成活性は検出されなかった。しかし、その反応液に後からオルガネラ膜成分を添加することにより、RNA合成活性が検出された。このことはTMV RNAの翻訳過程と、複製複合体の形成過程が分離可能であることを示唆している。 mfBYL中でTMV RNAを試験管内翻訳した反応液を蔗糖密度勾配遠心に供したところ、複製タンパク質は2つのピークとして分画された。各画分に生体膜成分を後から添加してmfRNA合成活性を解析した結果、沈降係数の大きい複製タンパク質が含まれる画分にはRNA合成活性が検出された。このことからオルガネラ膜の非存在下において、沈降係数の大きい状態で存在する複製タンパク質複合体は自身のRNAを含み、複製複合体が膜上に形成される前段階にあることが示唆された。 また、目的の複合体が含まれている画分と、TMV RNA非添加条件で同様の操作を行った画分とで含有するタンパク質を比較した結果、目的の複合体と共沈降していると思われるバンドが、少なくとも一本検出された。今後はこのタンパク質をさらに精製して、質量分析などに供して部分アミノ酸配列を決定する計画である。 この研究成果は平成17年度日本植物病理学会大会において発表予定である。
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