TMVの複製複合体は、宿主細胞の生体膜上に形成されることが知られている。TMV複製複合体の形成過程を解析することを目的に、TMV RNAを生体膜除去BY-2抽出液(mdBYL : membrane-depleted BYL[前年度はmfBYLと表記])を用いて試験管内翻訳し、反応液中に蓄積される複製タンパク質複合体(複製複合体の前駆体)の性状解析を行った。 前年度は蔗糖密度勾配遠心によって上記の複製タンパク質複合体を精製していたが、今年度は複製タンパク質の1つである180k-Daタンパク質にFLAGタグをつけたTMV RNAコンストラクトを作製してmdBYL中で翻訳した後、アフィニティー精製を行った。その結果、タグ付加180k-Daタンパク質と共に、もう1つの複製タンパク質である130k-Daタンパク質、そしてTMV RNAが共精製され、この溶出画分に生体膜を添加すると活性を持つ複製複合体が形成された。このことから上記の3種の因子が同一の複製複合体前駆体(PMTC : pre-membrane targeting complex)に含まれていることが、より直接的に示唆された.PMTCに含まれる宿主因子の同定については、質量分析に供するに足るタンパク質量確保に向けて、現在精製条件などを検討中である。 またPMTCを含む溶液に外来RNAを添加した後で膜を添加した場合、TMV配列を持った外来RNAのみが特異的に複製された。それに対し、膜上で複製複合体を形成させてから外来RNAを添加した場合には、複製活性がほとんど検出されなかった。これらの結果からPMTC中の複製タンパク質は、膜結合以前に外来のTMV RNAにトランスに作用し、複製複合体にリクルートする活性があることが示唆された。 上記の研究成果の一部は平成17年度日本植物病理学会大会において発表した。また、現在論文投稿準備中である。
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