2004年度は、今後の研究の土台として、アンデス文明形成期(2500-50 BC)における近接する諸神殿の関係を探るため、ペルー北部中央海岸地方ネペーニャ河谷下流域に位置する2つの神殿遺跡にて、発掘調査を実施した。 2002年に続いて2回目の発掘となるセロ・ブランコ遺跡では、前回提案した予備的編年を補完する形で、建築・壁画・土器資料ならびに絶対年代試料を充実させた。これによって、これまでペルー北部中央海岸地方に欠けていた編年研究の主柱を打ち立てられる見通しがついた。それは下に述べるワカ・パルティーダ遺跡をはじめとする近隣諸遺跡とのあらゆる比較研究の基盤として、必要不可欠な成果であった。また、副基壇にて儀礼的廃棄場ないし饗宴場と思われる特殊な遺構を掘り出したが、これは形成期神殿の機能解明に重要な発見である。 これまで全く手付かずであったワカ・パルティーダ遺跡は、セロ・ブランコ遺跡から3km程度離れた対岸に位置する。建築・有機物ともに保存状態の良好な遺跡であった。発掘した土器の予備的分析から判断して、少なくとも形成期後期(800-250 BC)にはセロ・ブランコと活動時期が重なっていると思われる。また、主に神話的人物・動物をモチーフとする複数の多彩色壁画・多彩色円柱、石彫を発見した。とりわけ多彩色壁画は大型(最大2x6m)かつ保存状態が良好で、それ自体学術的に非常に貴重な発見であるのみならず、アンデス文明形成期における近接する諸神殿の関係を探るという調査目的に対して、既に壁画資料のあるセロ・ブランコ遺跡との比較分析を可能にするという点で、極めて貴重な成果である。この壁画等の発見に関しては、現地諸事情から判断して、2005年度の調査まで現地新聞等による発表を控えている(下記の「成果を公表を見合わせる必要がある場合」には当てはまらない)。
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