研究概要 |
本研究では、カイコガにおいて黄色い繭の着色に関与するタンパク質を同定することを目的とし、はじめに、黄色い繭を作るカイコガ絹糸腺から黄色に着色しているタンパク質を精製した。このタンパク質に含まれていたカロテノイドの組成を検討したところ、主にルテインが含まれていることが明らかとなった。そして、このタンパク質をCarotenoid Binding Protein(CBP)と命名した。CBPは、(1)絹糸腺が黄色に着色する時期に限定して存在し、(2)CBPは、絹糸腺だけでなく消化管、精巣および卵巣にも存在していた。(3)またcDNAクローニングを行なったところ、CBPは、哺乳類においてステロイドホルモンの合成に関与するタンパク質、StARファミリー特有の脂質結合ドメインを持つことが明らかとなった。 黄色に着色している、数種類のカイコガ繭色品種絹糸腺における、CBPの発現を検討したところ、CBPは、カロテノイドによって黄色に着色している品種の絹糸腺にのみ発現していることが明らかとなった。さらに、CBPが繭の着色に関与するタンパク質か否かを調べる目的で、RNAiにより、黄色い繭を作る蚕体内のCBPの産生を抑制したところ、繭の着色も抑制されたことが明らかとなった。このことから、CBPは、細胞内におけるカロテノイド輸送に関与し、繭の着色に深く関わるタンパク質であると考えられた。この研究成果は、FEBS letters,2004年の567号に発表した。
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