今年度は、カトリック・ファンダメンタリズムを中心に文献研究と現地調査を行い、その成果を(1)論文と(2)学会において発表した。 (1)論文 マルタにおける聖体礼拝のあり方を論じた論文(「カトリック世界における「宗教復興」:聖体礼拝adorazzjoniの今日的展開について」)は、『現代宗教2005』(東京堂出版)に掲載された。この論文では、従来「伝統的信心業」という枠組みにおいて捉えられてきた「聖体礼拝」の復興現象を取り上げ、フィールドデータをもとに具体的に検討することを通じて、「伝統への回帰」というよりはむしろ、多様な実践の新たな創出及び意味の拡散が起きている点を指摘した。なお、この研究を遂行するにあたり、「聖体礼拝」を重視する諸宗教集団の調査を重点的に行うとともに、神学や宗教学の文献を多数購入した。 (2)学会発表 日本文化人類学会大38回研究大会において、「カトリックの信仰世界と『ファンダメンタリズム』」と題する研究発表を行った。本発表では、分析概念としての「ファンダメンタリズム」と現地概念との齟齬を中心に発表した。また、国際宗教学宗教史会議第19回世界大会において、マルタにおけるカリスマ刷新のあり方を論じた発表を行った("The Development of Groups within/out of Catholic Charismatic Renewal in Malta : On the Specialization and Reorganization of Movement")。本発表では、集団の分化と改編の過程について、マルタにおけるカリスマ刷新運動の活動を事例に考察を行い、カリスマ刷新の下位集団が専門分化することにより生じる、さまざまな変化の諸相について報告した。なお、これらの研究を遂行するにあたり、カリスマ刷新等複数の宗教集団を対象に聞き取り調査を行うとともに、ペンテコスタリズムやファンダメンタリズムに関する文献を多数購入した。 このほか、ヨーロッパとの比較の観点から書かれた、日本におけるカトリックの巡礼地に関する論文が『キリスト教と文化』(関東学院大学)に掲載された。
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