1986年以降、国際司法裁判所(ICJ)に係争される領域帰属紛争において、「effectivit□s」という用語が必ずといって良いほど頻繁に用いられるようになった。しかしながらその概念内容や用法に統一性を見出すことは難しい。「effectivit□s」という用語が、1928年パルマス島事件における「主権の表示」にひきつけて理解される傾向があることから、現代における領域の意義を考察するためにも、この新しい用語が伝統的領域法概念やパルマス島事件以降の領域法の発展とどのような関係があるのかを確認する必要がある。 そこで、effectivit□sが用いられたICJ判例(国境紛争事件、陸・島・海洋境界紛争事件、カタール=バーレイン間の海洋境界および領域問題事件、カメルー=ナイジェリア間の陸地と海洋境界事件、プラウ・リギタンとプラウ・シパダンの主権に関する事件)を、(1)様式論と歴史的凝固概念、(2)原始的権原と承継的権原、(3)境界画定紛争と領域帰属紛争の区別という三つの文脈から、分析を行った。その分析から、同じくeffectivit□sといえども、領域権原の取得に直接的に関わる「源としてのeffectivit□s」と既存の領域権原を確認するための「証拠としてのeffectivit□s」を区別して理解する必要があることが明らかになった。 effectivit□sが主権に関わる以上、このような概念を用いることの帰結を、領域主権の正統性と国際秩序の安定性を考慮しつつ、慎重に見極めなければならない。
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