フランスの移住者政策における行政と団体の役割の変容、連携の実態を把握し、女性移住者による団体活動を調査するため、パリ市とその近郊において7ヶ月間の現地調査を行った。移住者が集中的に居住し、市の再開発計画である「都市政策(Politique de la Ville)」の重点対象となっている地域を主な調査対象と定め、その中で女性移住者が運営する団体を網羅的にマッピングした。そこから、定期的に活動を継続する団体を選んで聞き取りを行うほか、同意を得て、定期的な相談事業、識字教室や集会における参与観察を行った。また、団体代表者や運営者、仲介者に対して、活動内容とライフストーリーの聞き取りを行った。識字教室や相談事業などへの参加者に対しても、ライフコースや生活実態についての聞き取り調査を実施した。特に、1.「都市政策」対象地域を抱えるパリ市内のA・B区において、行政機関と女性移住者団体等が連携し情報を共有するネットワークが存在することを確認し、その機能の実態を調査、分析した。2.団体代表者や仲介者に対する聞き取りからは、送出国での家庭環境などの社会的資源、語学能力や学歴などの文化的資源が、フランスで行政との交渉にあたる仲介を行う上で重要な資本となっていることが分かった。3.同意を得た団体における、参与観察を含めた調査からは、参加者の抱える住宅、滞在許可証などの問題の多くは、一夫多妻婚と何らかの因果関係にあることが分かった。これに対して団体は、女性移住者の生活の不安定化をもたらす原因の一つとして、行政との連携の元に対策を立てようとしている。その際、政府の移住者政策における女性の地位対策の重点化が重要な後ろ盾となっているものの、個別の対応は団体と仲介者が担っている。4.移住者への社会的支援において担う役割の重要性にもかかわらず、団体の多くは補助金の削減により運営上の困難を抱えていることが分かった。
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