細胞内での分子の振る舞いとコミュニティー効果を調べるアプローチとして、金微粒子を分子マーカーとして用いた、細胞内一分子発現解析法の新規樹立を行うために検討を行った。 細胞内発現分子解析の標的としてmRNAにターゲットを絞り、細胞内での分子発現状態を、空間分布を保ったまま定量的に調べる方法の確立を目的とした。方法は、表面に各種合成DNAを修飾した金微粒子プローブを分子マーカーとして用いた上で標的mRNAを標識し、走査型電子顕微鏡を用いて直接観察することにより標的分子数を定量化した。金微粒子を用いる利点は、蛍光分子のように褪色することがない、電子顕微鏡を用いて数を数えることにより標的分子数を定量化することが可能である、各大きさの微粒子を用いることにより多種類の標的分子を同時に標識することが可能である等の点が挙げられる。 実験手法を確立するためにmRNAでなく合成DNAをモデル標的分子として基板上に固定し、金微粒子プローブを反応させることにより測定条件の検討を行った。相補的な配列を持つDNAと相補的でないDNAを標的として用いて検討を行った結果、相補的な配列を持つ標的DNAをS/N比1800以上という高い感度で検出することが可能であるとわかった。また、基板上の標的DNA数に比例して検出される金微粒子数が変化することから、本手法を用いて標的分子数を定量化することが可能であると分かった。さらに、10nm、20nm、40nmの3種類の金微粒子にそれぞれ異なる種類のDNAを固定しプローブとして用いることにより、3種類の標的分子を選択的に検出することが可能であるとわかった。 得られた成果はFrontiers in Environmental Science、MNC2005、日本生物物理学会、米国生物物理学会等の国内外の会議にて発表した。
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