細胞内での分子マーカー発現とコミュニティー効果を一分子レベルで調べるアプローチとして、金微粒子を標識として用いた、細胞内マーカー一分子発現解析法の新規樹立の評価を行った。具体的には、マーカー分子に相補的な合成DNAを修飾した金微粒子を標識として用いた上で標的マーカー分子(発現mRNA等)を標識し、走査型電子顕微鏡(SEM)と原子間力顕微鏡(AFM)を用いて直接観察を行い、金微粒子数をカウントすることにより標的分子数を定量化した。 SEMを用いた観測法では、合成DNAをモデル標的分子として基板上に固定し、金微粒子プローブを反応させることにより評価を行った。金微粒子プローブの反応特異性の検討を行った結果、S/N比1800以上という高い感度で検出することが可能であるとわかった。また、基板上の標的DNA数を変化させて検出を行う実験より、電子顕微鏡観測法を用いて標的分子数を定量化することが可能であることが分かった。さらに、サイズが異なる金微粒子にそれぞれ異なる種類のDNAを固定しプローブとして用いることにより、複数種類の標的分子を選択的に検出することが可能であるとわかった。 AFMを用いた観測法では、粗い表面上に固定された金微粒子のサイズを識別するための方法の確立を行った。具体的には、高さではなく粒子頂点付近の曲率から粒子径を推定する「曲率再構成法」の構築を行った。探針形状の影響を小さくするために先端径が揃ったカーボンナノチューブ探針を用いて乾燥細胞上で金微粒子の凹凸像を取得し、曲率再構成法により粒子径を推定した。比較として、同じ視野をSEMにて観測し、両観測結果より得られた粒子径を比較した。その結果、粒子頂点付近10%程度の曲率より粒子径再構成することにより、細胞上にランダムに分布した30nmと50nmの粒子を識別することに成功した。
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