ショウジョウバエpupaのsalivary glandはAPF15時間前後において、変態ホルモン・エクダイソンによりカスパーゼ依存的に細胞死を起こし、正常発生中に組織自体が細胞死により除去されることが知られている。昨年度こうした巨大な組織の除去が時間的・空間的にいかにして制御されているかを明らかにする目的で、カスパーゼ活性化のライブイメージングを行い、カスパーゼの活性化はsalivary glandの頭側先端部に存在する数細胞から始まり、カスパーゼ活性が尾側に伝播することを明らかにしている。 本年度はこの活性化パターンの詳細な解析を行った。ショウジョウバエカスパーゼのひとつであるDRONCのdominant negative体を発現させるとこの活性化は顕著に抑制されることから、この活性化はDRONCを解したシグナルであることが明らかになった。さらに、単離したsalivary glandを器官培養しエクダイソンにて細胞死を誘導する系を用いて、カスパーゼ活性化パターンをFRETを用いたカスパーゼindicator SCAT3(Takemoto et al.J.Cell.Biol.2003)を用いて解析した。その結果、in vivoで見られたようなapical側の数細胞から活性化が始まるのではなく、in vitroでは活性化が開始される細胞はまったくランダムであることを明らかにした。これは、in vivoで観察されたパターンは単なる細胞間の感受性の違いではなく、in vivo特異的なエクダイソンの情報処理機構が存在することを強く示唆するものである。さらにこのカスパーゼ活性化パターンを時空間的に制御する遺伝子明らかにするために、遺伝学的手法により同定することを試み、現在までに数種類の変異体に関してその役割を明らかにしつつある。本年度は得られた変異体に関して、カスパーゼ活性化パターンの制御機構を詳細に解析する予定である。
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