研究課題
本研究は、沿岸生態系を脅かしている有機スズ化合物に着目し、ワレカラ類の生物影響およびそれに伴う沿岸生態系の攪乱機構を解明することが目的である。これまでの実験により、有機スズ化合物は、海洋環境中で検出される濃度(10ng l^<-1>や100ng l^<-1>)の暴露により、ホソワレカラの生残、成長速度の減少、生殖動態へ影響を及ぼし、結果としてワレカラ類における生物影響はその個体動態へ影響を及ぼし、結果としてワレカラ類を捕食する高次消費者へ負の影響を及ぼすことが推察された。そこで本年度は、ワレカラ類を捕食するウナギに着目し、その回遊履歴に伴う有機スズ化合物の蓄積特性について検討した。日本沿岸域より日本ウナギを採集し、耳石の微量元素(ストロンチウム、カルシウム)の分析により、各個体を3つの回遊様式(海型、河口型、川型)に分類した。同時に各個体の肝臓中の有機スズ化合物の濃度を定量した。海ウナギは、川ウナギと比較して顕著に有機スズ化合物の濃度が高いことが示された。また河口ウナギの有機スズ化合物の濃度は、海ウナギと川ウナギの中間であった。よって回遊魚では、海に滞在する期間が長い個体ほど有機スズ化合物のリスクが高まることが明らかになり、たとえ同種であっても回遊様式の違いによって有機スズ化合物に対するリスクが異なることが示唆された。これらの結果はEstuarine, Coastal and Shelf Science誌に公表した。
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Estuarine, Coastal and Shelf Science 69
ページ: 270-290
Water, Air, and Soil Pollution (印刷中)