●基礎研究とその成果 六朝文学に於ける『山海経』の受容の形態について、主に、東晋の郭璞『山海経図讃』を採り上げ、また、郭璞以降の『山海経』受容の形態を、初唐成立とされる『天地端祥志』に探った。研究・調査に当たっては、図像と文献の双方からの検討を試みた。 (1)の郭璞『山海経図讃』については、当該作品の一編である、「崑崙丘圖讃」を採り上げ、そこに展開される、郭璞独自の水の宇宙観について検討した。その研究成果は、論文の形に纏め、『松浦友久先生記念 中国古典文学論文集』に掲載した。 (2)の六朝以降の『山海経』受容については、現在、日本にのみ残る逸書・前田尊経閣文庫所蔵『天地端祥志』に見える『山海経』受容を巡って、主に郭璞の影響を中心に検討した。その成果は、日本道教学会全国大会にて発表し、早稲田大学21世紀COE研究報告書に纏めた。 さらに『天地端祥志』に見える鳳凰の項目に『山海経』の鳳凰の系譜を引く四羽の凶鳥が描かれる点に注目し、この凶鳥の成立と変遷を巡って、『山海経』世界とも関わりの深い。緯書『楽叶圖徴』を中心に検討した。その成果は21COE研究に於て発表した。 ●『山海経』図像調査とその成果(学会発表など) 『山海経』の図像研究としては、日本道教学会全国大会において、六朝以降の『山海経』受容の形態を探る試みとして用いた前田尊経閣文庫本『天地端祥志』に賦される34の図像について『山海経』図像との関わりを、郭璞という人物を軸に検討した。検討に当たっては、『天地端祥志』との継承関係が認められる敦煌本『端應圖』にも言及した。その研究成果は早稲田大学21COE研究報告書として纏めた。
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