研究概要 |
本年度の目標は,テストといった教育評価が,(1)学習者の自己制御学習に与える影響プロセスを検討し,(2)そこから学習指導への示唆を明らかにすることであった.また,このような検討を通して,(3)有効な自己制御のあり方について検討を行うことも3点目の目標として加えた.この3つの目標に関して,次のことが明らかになった.(1)に関しては,テストが学習者の自己制御方略に影響を与える際に,"テスト形式スキーマ"という,テストに関する暗黙の知識・信念が作用していることが明らかになった.この点は文章読解に関する個別実験を実施する中で,見出された.(2)に関しては,(1)で明らかになったような"テスト形式スキーマ"に対して,直接学習指導を行うことによって,テストが自己制御学習に与える影響を変えることができるということが明らかになった.これは,中学2年生に対して実際に授業を行う授業実験を行い,仮説を検証した.この(1),(2)の研究を通して,テストといった教育評価が学習者に与える影響に関してのプロセスモデルが提唱された.(3)に関しては,自己制御学習の重要な構成要素の1つである"回避方略"が,定義としても非常に複雑な概念であり,その有効性も状況による影響を大きく受けてしまうということが明らかになった.この点に関しては,先行研究を総合し,調査研究を行う中で明らかになった.(1),(2),(3)を総合して,指導と評価の相互作用プロセスに関して,教育実践的に有効だと思われる部分の解明が進んだ.以上の実績は,すべて学会誌として投稿した.
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