研究課題
本年度は、リサーチを主に行った。夏学期に当該テーマに関する邦語の文献調査をした後、冬学期は委託研究先のミュンヘン大学法学部においてM・レーナー教授の指導の下、1998年以降のドイツ所得税法・法人税法の大幅な改正についての検証を行った。具体的には、1)この法改正の経済的実効性、2)法改正による条文間の齟齬の有無、3)わが国の租税判例との主たる争点の比較、4)今後のわが国の課税政策への示唆という点に絞って研究した。これらのテーマに関しては、ミュンヘン大学、マックス・プランク研究所、連邦財政裁判所における資料収集の他、現地で行われる公開討論も大変参考になった。2004年12月に行われた国際租税学会(International Fiscal Association)ドイツ・ババリア支部の年次大会、ならびに2005年3月に開催された第44回ドイツ租税専門会議(Steuerfachtagung)への参加である。その研究成果の一部は、ドイツ語にて来年度中に公表予定である(Die Behandlung der Verluste im Einkommensteuerrecht)。来年度はこの成果を踏まえ、ドイツの周辺諸国(オーストリア・オランダ)の租税制度についても研究したいと予定している。近年の欧州租税法は、1国の単独の課税ポリシーだけで決定されるものではなく、常に近隣諸国の動向を見て改正されるからである。最後に、欧州租税法を研究する意義について。地理的にはるかに遠い関係ではあるが、租税法と関連するいくつかの私法(民法・民事訴訟法)及び国際二重課税(モデル条約)の分野で、わが国ではドイツ法の影響力が依然として大きいこと、ならびに欧州でも近年はアメリカに次いで日本の租税制度への関心が払われ、企業の投資活動に関する議論でよく言及されている以上、双方向での対話は重要と考える。
すべて 2005
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Asia-Pacific Tax Bulletin Vol.10, 1/2
ページ: 76-84