本年度は、1.昨年7月に打ち上げられた「すざく(Astro-E2)」衛星の地上および軌道上における性能実証、2.「すざく」による近傍銀河の観測計画の立案、3.観測した銀河からの銀河リッジ放射(GRXE)の検出とその分析、の3項目を行った。 1.私は「すざく」衛星に搭載されているHXD検出器のCPU部を責任担当しており、7月の打ち上げ前に万に一つの不具合もないことを確かめた。打ち上げ後は衛星の運用に参加するとともに、HXDの健康診断を日々おこなうための簡易ソフトウェアを作成した。また観測データを解析するためのソフトウェア群も改良している。 2.昨年度のうちに「すざく」が初期観測する天体は決まっていたが、衛星の不具合のためすべてキャンセルになった。これをうけて私はあらためて近傍銀河NGC2403の観測計画を立案した。この提案は無事に採択され、この3月下旬に観測されることが決まっている。さらに私は、我々にもっとも近い通常銀河であるアンドロメダ銀河(M31)の観測を、「すざく」の公募観測にも提案している。この提案が採択されれば、来年度中に観測されることになる。 3.「すざく」衛星が我々の銀河系の中心領域とリッジ領域を観測したデータを解析している。この詳細なスペクトルデータだけからでもGRXEの物理量をかつてない精度で決定できている。比較対象となる近傍銀河の観測は、「すざく」の打ち上げ遅延などにともなって来年度に持ち越しとなったが、今後のデータ解析にそなえ、バックグラウンドとなる低質量X線連星系のエネルギースペクトルを詳細に解析し、その結果を日本天文学会の年会で発表した。
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