研究概要 |
高次元の既約シンプレクティック多様体,とくに,既約シンプレクティック多様体上に起こりうる双有理収縮や解析ファイバー空間の詳しい構造や,それらが実際に存在するための良い十分条件を明らかにすることを目標として研究を行っている.今年度は,射影的な既約シンプレクティック多様体上にラグランジュファイバー空間の構造であって解析局所的な切断を許すものが存在したとき,その双対ファイバー空間を定義し,その上に自然なシンプレクティック形式を構成でき,それに関して双対ファイバー空間もまたラグランジュファイバー空間になることを証明した.この結果は,K3曲面上の単純層のモジュライ空間には自然なシンプレクティック形式が存在するという既知の結果の一種の一般化とみなすこともできる.また,この結果を応用して,射影的既約シンプレクティック多様体上の大域切断を持つラグランジュファイバー空間の底空間は射影空間になるという趙-宮岡-Shepherd-Barronの定理を,解析局所切断が存在する場合へ一般化することができた.この研究に関連して,草津代数幾何学セミナー,第13回日本数学会国際研究集会"Moduli spaces and Arithmetic geometry",城崎代数幾何シンポジウム,琉球大学セミナーなどに参加して情報収集を行ったほか,城崎代数幾何学シンポジウムでは上記の研究結果についての発表も行った.さらに,上記研究結果をまとめた論文を作成し現在これを出版すべく論文雑誌に投稿した.
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