研究概要 |
符号(2,2)の不定値計量に関する自己双対計量および自己双対接続に関する研究を行った。その中で、昨年中になされたLeBrunとMasonの仕事を受けて、これまでの研究との関連などを調べた。 LeBrunらの仕事は具体的には、Zollfreiと呼ばれる特殊な性質を持つ自己双対計量に関して、その分類やツイスター理論を展開するというものであり、私がこれまで扱っていた研究対象に、より深い視点を与えるものであった。この理論を研究する中で、私は特異性をもっているがツイスター対応が記述できる例を構成することに成功した。この例は、Peteanによって与えられたトーラス上の自己双対計量をうまく組み合わせたもので、そのツイスター対応はRandon変換を用いて完全に記述される。現在この例については論文にまとめている段階である。なお、この例の構成法は、Zoll構造とよばれるより低次元の構造を利用するものであり、この方法を高次元のプロセスとして利用すれば、一連の理論の新しい一般化の方法として利用できる可能性もあると考えられる。 一方でやはり昨年中に、Masonによって不定値自己双対接続とそのツイスター対応に関する論文も提出されており、こちらでは可積分系の理論との関係が強く指摘されている。これに関しては新しい仕事をすることはできなかったが、Masonの理論では、まだ平坦な自己双対多様対上の理論しか扱っていないため、上記の自己双対計量の理論と組み合わせて、さらに深い理論に発展する可能性があると考えている。 ツイスター理論を、ファイバーを複素射影直線からトーラスなどに換える新たな一般化の方向性についても、現状としてはその理論を打ち立てることができなかったが、LeBrunはツイスター空間の一般化の可能性として、複素射影直線を別のリーマン面に置き換える案を提示しており、もしこれが可能となれば、その先には非常に多くの可能性が広がっていると考えられ、今後も引き続き研究していくべき課題であると考える。
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