本研究の目的は、大腸菌由来のシクロフィリンの素早い折れたたみ反応に注目し、なぜ、素早く折れたたまれることができるのかを解明し、かつ、会合体形成を防ぐ機構を提案することである。 まず、シクロフィリンがどのくらい素早く折れたたまるのかという問題を明らかにするために、様々な蛋白質の構造とその折れたたみ速度の関係を調べた。その結果、2状態や非2状態(準安定な中間体を経由)の折れたたみを示す蛋白質に対して、どちらも、主鎖構造の複雑さとその折れたたみ速度が強い相関関係にあることが分かった。(この成果は、Journal of Molecular Biology誌に掲載された。)実験で得られたシクロフィリンの折れたたみ速度は、その構造から予測される速度と比較すると、100倍から1000倍程速い。 次に、高圧下温度ジャンプ装置を用いて、モデル蛋白質スタフィロコッカルヌクレアーゼの折れたたみや変性過程を観測することを試みた。その結果、変性過程に比べて、折れたたみ過程は測定は困難であり、反応のシグナルに対してノイズが大きすぎることが分かった。現在、S/N(シグナル/ノイズ)比を上げるべく、高圧下温度ジャンプ装置を改良しているところである。 今後、(1)高圧下温度ジャンプ装置を用いて、シクロフィリンの折れたたみ過程を測定する。(2)シクロフィリンのいろいろな部位に変異を導入し、高圧下温度ジャンプ装置を用いて、それぞれの変異が折れたたみ速度にどのように影響を及ぼすかを調べる。(3)最終的に、会合体形成を防ぐべく素早い折れたたみ機構を提案することを計画している。
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