研究概要 |
本研究の目的は、国際社会での規範形成においてグローバルに連携した人々やNGO、すなわちトランスナショナルな市民社会(以下TCSと略す)が果たしている役割について、(1)国際政治理論と(2)TCSのキャンペーンにかんするフィールドワークを通じた事例研究の架橋から明らかにすることである。 本年度もMake Poverty Historyキャンペーンの政治過程を把握すべく英仏各国の研究機関・NGOに調査をすることでTCSによるメディアを駆使したアドボカシーの手法を学び、一部を研究成果として発表した。海外査読誌発表では、第二次大戦後の国際経済体制の制度構想と実務家の実践において周縁化されていた地域の存在、途上国債務発生メカニズムの関連性を"Conceptual Relevance of "Embedded Liberalism" and its Critical Social Consequences", PAIS, Graduate Working Papers Number 03/06で明らかにした。海外学会では、米国ISA研究大会の査読を通過した報告要旨において、戦後日本の社会運動と現在のグローバル公共圏へのリンクについて論じた。 国内実績では、現在日本の若い世代で旧来とは異なる市民意識が醸成されつつあり、それらを基底としたポスト新しい社会運動的方向への移行を「ホワイトバンドの国際政治学-トランスナショナルな市民社会による国際規範形成と途上国重債務救済をめぐって-」『創文』491号でひろく江湖に問うた。また、日本国際政治学会と日本社会思想史学会で報告を2本行った。 これら研究調査から得られたTCSによる規範形成の理論と実践にかんする知見の一部を、査読誌『相関社会科学』に「世界秩序構想としてのコスモポリタン・デモクラシー」として発表した。さらに国際政治学会院生研究会を組織するとともに、TCSの可能性とグローバル規範の動態についても、青山学院大学と筑波大学のシンポジウム等で報告と討論を行い、国際関係論と政治思想史の欧米を代表する政治哲学者と国際関係論研究者の翻訳をし、うち一冊が出版された。
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