研究概要 |
1)パーソナリティの5因子理論(FFT)において衝動性は複数の次元のfacetにまたがる複合的次元として据えられている。そこで,双生児を対象とした調査研究によりFFTの生物学的妥当性を人間行動遺伝学の手法を用いて検討した。遺伝因子分析の結果,表現型で観察されるパーソナリティの5因子構造は遺伝および非共有環境両方の構造においても見られること,遺伝,非共有環境の因子構造はカナダ・ドイツ・日本のサンプル間で極めて安定していることが明らかになり,FFTの妥当性が支持された。また,5因子間に見られる相関は高次の因子により説明され,衝動性を説明するとされる各次元は同じ高次因子に含まれることが明らかになった。以上の研究は,Journal of Personality and Social Psychology,およびPersonality and Individual Differences誌に受理され,現在印刷中である。 2)昨年度,衝動性の制御に重要な役割を果たすとされるエフォートフル・コントロール(EC)を測定する質問紙の作成とその妥当性の検討を行ったが,本年度はこのECと幼児期の問題行動との関連を検討した。幼児期の双生児の母親に対し質問紙調査を行い,ECおよび外在化/内在化問題についての評定を得た。多変量遺伝分析の結果,ECを低めるような遺伝的影響は同時に両方の問題行動のリスクを高めるような働きをすることがわかり,ECの低さは外在化問題のみならず内在化問題についても遺伝的素因となっている可能性が示唆された。また,ECとは独立の遺伝要因が両問題行動を負に相関させるように働くことが明らかになり,EC以外の要因(動機付けの個人差等)が外在化/内在化問題を区別する可能性が示唆された。以上の研究は「パーソナリティ研究」誌に受理され,現在印刷中である。
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