研究概要 |
1.本年度は,11月と12月に野辺山ミリ波干渉計を利用した金星大気のミリ波観測を行なった.この観測では,前年度に観測された金星雲層高度での輝度温度非一様性が再現性のあるものかどうかを検証することに加え,アンテナの感度特性や指向精度を測定し,解析精度を向上させることを目的とした.結果として,前年度の観測よりも細かい500km規模の空間構造を得ることに成功し,金星雲層付近において,二酸化硫黄の鉛直分布が局所的に大きく変動している可能性を示した.また,同時に観測される一酸化炭素の吸収線のリトリーバル解析から,金星上層大気中の一酸化炭素が金星夜面に濃集している結果を導いた. 2.ミリ波で観測される金星大気とは異なる高度領域の情報を得るために,近赤外領域および中間赤外領域での観測も同時に行なった.ハワイに設置されているIRTFを利用した近赤外の観測では,金星雲層下部の光学的な濃淡を100km以下の高空間分解能で観測し,従来の研究では把握できていなかった微細構造を可視化した.すばる望遠鏡を利用して行なった中間赤外領域撮像では,金星雲層上端の大気構造を観測し,極域付近での局所的な高温度領域とそれを囲む低温部分,および金星での太陽周期に同期したものと思われる波動構造を抽出することに成功した.
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