立川は、局所化によるインスタントンの数え上げの手法の拡張を研究して、4次元N=2ゲージ理論のベクトル多重項を支配する低エネルギーラグランジアンを再帰的に決定する所謂「接触項方程式」が、例外群を含む一般のゲージ群とハイパー多重項の表現を持つ場合にも成立することを示した(2005年3月の春の学会で報告。論文は準備中)。これは、インスタントンの数え上げを通常の4次元空間で行ったものと、そのブローアップ上で行ったものとを比較することによって行われる。 また、立川は受入教官の江口と共同で、超弦理論のカラビヤウへのフラックス付きコンパクト化による4次元N=1超対称理論がどれぐらいありうるかという問題を研究した。現実の素粒子理論は、あと数年で実験にかかりうるところにN=1超対称性があると非常につよく示唆されているので、この研究は実験物理にも大きな意味を持ちうる。その結果、プランクスケールより階層的に低いスケールでゲージ理論があらわれるような真空は比較的沢山あるということがわかった(2004年9月の秋の学会で報告)。しかし、この場合のゲージ理論はパリティ不変性を保つようなものであって、素粒子の標準模型はそれを破っているので、そのようなモデルを探すことが次の問題となってくる。 また、立川は、東京工業大の坂井、新田、大橋、衛藤、五十棲、および理化学研究所の太田とともに、N=2超対称可換ゲージ理論のドメインウォール解で、超対称性を半分保つものについて調べ、解のパラーメタのなす空間の構造を解明した(投稿中)。パラメタ空間は、数個の多様体をその中の因子にそって張合わせたような構造をしていることがわかった。また、その張合わせの近傍ではドメインウォール間に興味深い力学が存在することを見いだした。
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