本年度も、昨年に引き続き超対称ゲージ理論の研究を超弦理論の観点を援用しつつ行った。特に、その中でも、超対称性に加えてスケール変換のもとでの不変性をもつ、超共形ゲージ理論について研究を行った。これらは、強結合であるため安直な摂動的な解析が適用できないが、ここに超弦理論の効能があらわれる。すなわち、超弦理論によれば、通常の4次元の超共形場理論は、1次元高い5次元の超重力理論をアンチドジッター空間上で考えたものと等価であることがわかる。この際、片側が強結合であればもう片側が弱結合になるため、解析が可能になるのである。具体的には、10次元のIIB型超弦理論を、5次元のアンチドジッター空間と5次元の佐々木アインシュタイン空間の積の上で考えたものを解析すれば良い。 さて、そのような立場からの研究として、最大の超対称性をもつ理論に関してはこの10年に非常に沢山の研究があるが、最小の超対称性をもつものに関してはここ数年研究が深化した興味深い分野であり、今年度の私の力点はそこにあった。 最小の超対称性をもつ超共形場理論の解析のために基本的なデータは、その理論の大域対称性三つの間の三角量子異常である。以上の議論から、その三角量子異常は、重力理論側のデータであらわせるはずである。超共形場理論の種別に対応するのは5次元の佐々木アインシュタイン空間の種別であるから、それら空間の幾何学であらわせるはずである。 以上のような考察のもとから、S. BenvenutiとL. A. Pando Zayasの協力のもと、佐々木アインシュタイン空間の幾何学と超共形場理論の三角量子異常の関連について精密に明らかにしたものが今年度の発表論文である。これは超共形場理論の解析において今後基本的な方法となると思われる。
|