研究概要 |
超流動状態の性質が通常のBCS状態からボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)的な状態へと結合の強さとともに連続的に変化するBCS-BECクロスオーバーは、引力相互作用するフェルミオン系において普遍的現象である。本研究では、低温高密度クォーク物質で実現するカラー超伝導への応用を念頭に置きつつ、BCS-BECクロスオーバー理論を相対論的な枠組みへと拡張した。 有限質量を持つ相対論的4体フェルミ模型を用い、粒子数一定の条件に対してガウス揺らぎの効果まで取り入れた上で、臨界温度の結合定数依存性を調べた。その結果、弱結合領域では通常のBCS状態が実現するが、結合定数の増加とともにフェルミオンの束縛状態によるBEC状態へと推移することが分かった。さらに結合定数を大きくしていくと今度は反粒子の効果により臨界温度は上昇し、相対論的BEC状態(RBEC)が実現することを指摘した。 また、ボゾン超流動体と希薄なフェルミ粒子の混合に対する低エネルギー有効理論をガリレイ不変性を指針として構築し、超流動中の渦にフェルミ粒子が束縛された状態を調べるのに用いた。その結果、束縛状態が可能なフェルミ粒子の角運動量(1)を決める簡単な公式を導くことができた。この公式をヘリウム3-ヘリウム4溶液の場合に適用することで、1=-2,-1,0の角運動量を持つヘリウム3粒子が超流動ヘリウム4中の渦に束縛されうることが分かった。 さらに、粒子数に僅かな非対称性のあるフェルミ原子気体の場合にも適用した。その結果、BEC(ボーズ・アインシュタイン凝縮)極限では角運動量1=-1,0,1にしか束縛状態は存在し得ないが、ユニタリー極限に近づくに従って負で大きな角運動量を持つフェルミ原子も束縛可能になるということを予言した。
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