研究概要 |
本年度は,三次元化学輸送モデルを用いて東京およびその近郊域の硝酸と硝酸塩エアロゾルの動態解析を行った.そのために,関東域において3次元気象モデルと化学輸送モデルを計算するシステムを構築して,2004年の冬季(1-2月)と夏季(7-8月)の期間の計算を行った.この計算では,気象庁の観測ネットワークのデータに同化させながら計算するなどの工夫により,関東平野での風系やオゾIン・窒素酸化物濃度を概ね再現することに成功した.この計算結果を観測と比較することにより,現在広く用いられている3次元化学輸送モデルで使用されている全硝酸(硝酸+硝酸塩エアロゾル)の生成過程・消失過程の計算スキームの妥当性を調べた.まず,N_2O_5+H_2O(aq)の不均一反応の反応速度定数の不確定性による全硝酸の濃度推定誤差を10-40%と推定した.この上で,硝酸の乾性沈着速度に対する全硝酸濃度の依存性を計算した.現在のモデルで用いられている乾性沈着速度では観測された全硝酸の消失を再現できず,現在のスキームはこの速度を約5倍過小評価していることを見出した.この結果は,全硝酸濃度の数値計算を行う際に,モデルにおける全硝酸の除去過程の計算法を改善する必要があることを強く示唆している.
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