平成17年度は、まず去年度の拡散の実験の制度をさらに上げるため、様々な温度でのIRAS測定を行った。それにより、活性化エネルギー、頻度因子に大きな変更はないが、さらに精度の高いArrheniusプロットを行うことができた。 次に、これまでのNO吸着のIRAS実験の結果をさらに深く考察し、さらに本来の目的の1つである単一分子の拡散や電子状態、振動を観察するため、現在のSTMシステムの改良に取り組んだ。まず、以前より計画のあった、RHK社製STMコントローラを導入した。コントローラの本装置への最適化のため、コントローラ内部の電子回路の抵抗の変更など、改良を行った。その結果、さらに低ノイズで良好なSTM像が以前より安定して得られるようになった。 次に、ロックインアンプを用いて、STS、IETSの測定システムの構築も行った。 現在は、安定した低ノイズのSTS、IETS測定のため、装置周りのノイズ対策を行いながら実験を行っている。しかし、STMユニットにわずかな熱の流入があることが最近分かった。フィードバックループを開放して行うSTSが、一定のtip-sample距離で測定しにくい状況にあり、熱ドリフト対策が必要である。原因として、3重の熱シールドの(sample transferなどのための)穴をふさぐ可動シールドに冷却機構を取り付けていないためと思われる。そのため、そこからのradiationがあると思われる。現在は、ノイズ対策と並行して、これの改良の計画を立てている。これが解決できれば、きれいなスペクトルや、微分マッピングがとれると思われる。 また、17年度は、装置の故障が多かった。FTIRの光源フィラメントが切れたり、STMのチューブピエゾが折れた。また、粗排気のロータリーポンプの故障もあり、少なからずメンテナンスに時間を費やしてしまった。 実験以外では、9月にベルリンでの国際学会でNOの熱拡散の実験について発表を行った。また、以前に行った11KでのPt(997)表面でのNO吸着状態の結果を論文にした。Surface Scienceに投稿、acceptとなり、現在はin pressの状態である。
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