研究代表者はZnOの結晶粒界における原子配列の構成原理を理解するため、2枚の単結晶を接合して作製したZnO単一粒界の高分解能透過型電子顕微鏡観察および理論計算による安定原子配列の予測を併行して行い、その詳細な比較・検討を行った。その結果、ZnOの結晶粒界は2種類の構造ユニットと呼ばれる単位構造の繰り返しで構成されることがわかった。そのうち、1種は局所的な圧縮歪みおよび配位数の欠損を持ち、もう1種は局所的な引っ張り歪みおよび配位数の過剰を有するものであった。また、2種類の構造ユニットは粒界での歪みを有効に緩和するため、交互に並ぶことがわかった。これらの知見はZnOの結晶粒界に限らず結晶粒界一般に適用できる構成原理である。 一方で研究代表者はZnOの結晶粒界における原子配列を巧みにコントロールすることによりPrおよびCo添加物の偏析条件を制御できることを見出した。この原理を適用してZnOの結晶粒界におけるPrおよびCoの偏析条件を最適化し、粒界を横切る電流電圧特性の非直線性を高めたZnO単一粒界バリスタの試作を行った。現在の実用材では、特性の指標である20以上の非直線指数αを得るために10個程度の結晶粒界を要するのに対し、本研究で作製した単一粒界バリスタはたった1つの粒界で同等の非直線指数を得ることができた。この技術を適用すれば現状では300μm程度の大きさであるZnOバリスタを1/1000以下である200nm程度に小型化できる可能性がある。
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