研究代表者はZnOの結晶粒界におけるPr添加物の偏析挙動ならびに非直線電流一電圧特性の発現原理について重要な知見を得るため、2枚のZnO単結晶を接合して、Prを添加したZnO単一粒界を作製した。その粒界に対して、電流一電圧測定、高分解能走査透過型電子顕微鏡法(STEM)による観察および第一原理計算による安定原子配列・Pr偏析の予測を併行して行った。詳細な比較・検討の結果、PrはZnO粒界に酸化物などの粒界層を形成せずにZnO-ZnO粒界の特定の原子位置に偏析することが明らかとなった。また、このPrは非直線電流一電圧特性の直接の起源ではなく、Zn空孔などのアクセプタ型点欠陥の形成を促進する役目を果たすことが示唆された。 一方、研究代表者はこれまでに学術論文誌に発表してきた成果の概説をJournal of the American Ceramic SocietyのFeature Articleに発表した。この論文においては、これまでに研究代表者が明らかにしてきた、(1)ZnO結晶粒界の原子構造およびその原子構造を特徴づける構造ユニットの配列原理、(2)ZnO結晶粒界におけるPr添加物の偏析挙動およびPrが非直線電流一電圧特性の発現に及ぼす役割、(3)ZnO結晶粒界の相対方位関係と粒界Pr偏析量、非直線性の相関性について報告し、全体としてZnO結晶粒界における原子構造、Pr偏析、電気特性の関係についてまとめを行った。
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