研究概要 |
手術中の臓器の移動・変形にリアルタイムで追従できるMRI誘導手術を可能とするため,本年度は基礎的な原理・手法の検討,MRIシーケンスの開発,および術中にリアルタイムにデータ処理を行うシステムのプロトタイプの構築を行った。本研究の最終的な目標は変形も含めた多自由度トラッキングであるが,1年目である本年度はトラッキング自由度を並進運動に限定することによって臨床現場での動作が可能なプロトタイプシステムの完成を急ぎ,次年度以降の発展的な原理開発のための研究プラットフォームを構築することに重点をおいた。 開発したMRIシーケンスは手術用開放型0.5TMRI装置で動作し,撮像対象の臓器の1次元プロファイル信号と画像再構成用信号を同時に取得することができ,最速で20フレーム/秒で臓器の並進移動を検出できることを確認した。一方データ処理システムは,臨床用MRI装置本来のデータ転送・処理系をバイパスし,共有メモリを使用した独自のデータ転送と,最新プロセッサを採用して新たに開発したデータ処理系を導入し,受信信号のデータ転送・処理の高速化を図った。これにより前述の20フレーム/秒で得られる信号をリアルタイムに処理して90ms以下の遅延で処理結果を出力することが可能となり,撮像対象の臓器の動きに関する手術ナビゲーション情報を術者に提供することが可能になった。 さらに,開発したプロトタイプのシステムを用いて(1)ボランティアの肝臓の呼吸に伴う動きのトラッキング,(2)ウシ肝臓を用いたMRI誘導下肝腫瘍マイクロ波凝固の模擬実験を行った。(1)では実際の臨床条件下でも肝臓の並進運動を捕らえることができることを確認し,(2)ではマイクロ波等のノイズに影響されることなく動いている肝臓の動き情報,画像およびMR温度画像が提供できることを示した。
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