研究概要 |
MRIによる術中臓器移動・変形トラッキングを実現するため,新しい4次元MRI撮像法「Adaptive 4-D Scan」を開発し,これに基づく手術ナビゲーションを考案した。4次元画像は3次元的な物体の動きや変形を時間的に連続した複数の3次元画像によって表現したものであり,「Adaptive 4-D Scan」は,周期的な動きをする物体の1周期分の4次元画像を得るための撮像法である。これによって呼吸で繰り返し移動・変形する臓器の画像化が可能である。本撮像法は,前年度に開発した1次元のリアルタイム臓器トラッキングによって撮像中に対象物の動きの位相を検知し,それに基づいてMRI装置のパルスシーケンサを制御しているため,自発呼吸のような周期の一定でない動きにも対応できるという特徴を有する。手術直前に本撮像法を用いて手術部位の4次元画像を取得し,手術開始と同時に呼吸位相モニタリングに基づいて各時点で最も体内の状態に近い3次元画像を4次元画像から選択して表示することにより,擬似的なリアルタイム3次元動画像を術者に提供することを想定している。 さらに実際に「Adaptive 4-D Scan」を0.5T手術用開放型MRIシステムに実装し,ファントムおよびボランティア撮像による評価実験を行った。実験では特に手術誘導で重要となる画像と実際の撮像対象物の間の位置ずれ及び術中診断画像としての画質を評価した。前者は4次元画像の時間分解能で決まり,30mmのファントムの往復移動を5つの3次元画像で表現した場合の誤差は4mmであった。またボランティアの肝臓周辺部位を本手法で撮像したところ,多少のノイズは認められるものの,臓器・血管等の形態は明確に識別可能で,呼吸に伴う肝臓の移動・変形を画像化できることを確認した。
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