大脳皮質に直接、一時的に攪乱を加え、fMRI信号への局所的かつ微小な効果を調べる本研究では、マカクザルを被験体とした4.7テスラfMRIシステムにおいて、従来と比較して高い信号雑音比を必要とする。そのため、本年度私はこの信号雑音比を向上させることを目的とする予備実験を行った。まずMRIの撮像条件を見直し、サルがMRI装置内で課題を遂行する環境を観察することで、信号雑音比の向上のために改善すべき点を絞り込む作業を行った。そして撮像条件・課題遂行環境の改善後、サルを環境に適応させるための訓練を行い、課題遂行中のfMRI信号を観察することで、信号雑音比改善の効果を検討した。具体的には、固視課題遂行中の覚醒マカクザルに対して、運動視覚刺激と静止視覚刺激をランダムな順序で提示し、event-related解析を行うことで、運動刺激提示時と静止刺激提示時のfMRI信号を全脳に渡って比較した。その結果、上側頭溝近傍のMT・MST野に両側性の神経活動が再現性をもって認められ、過去のサルにおける電気生理実験・ヒトにおけるfMRI実験などからの知見を裏付けることができた。高い信号雑音比を要求するevent-related fMRI実験において、ヒトと比較して小さいサルの脳に対して十分な空間解像度を得た上で、比較的少ない実験数で統計的に意味のある結果を出すことができるシステムを築いたことは、今後本研究だけでなく幅広い高次認知機能実験を行うことが可能であることを意味する。また、私は、2004年8月スウェーデンにて行われたUT Forum 2004にてポスター発表を行った。
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