本研究では、マカクザル前頭眼野(FEF)不活性化に伴う急速眼球運動課題遂行障害中に機能的磁気共鳴画像法(fMRI)実験を行い、局所不活性化にともなう全脳領域における活動の変化と、領野間の機能結合の変化とを計測することを目的としている。本年度の研究の内容は、(1)マカクザルFEFをGABA作動薬(ムシモル)溶液の注入により不活性化し、それに伴う急速眼球運動課題中の行動の変化を観測するための行動実験(前年度より引き続き)、(2)微小注入などの侵襲的手法をfMRIと併用するために必要となる装置・道具の開発(前年度より引き続き)、(3)本実験で用いるサル2頭の訓練および必要な手術、を行ってきた。(1)において、サルのFEFが局所的に不活性化されることにより反対側方向の急速眼球運動(視覚誘導性急速眼球運動、記憶誘導性急速眼球運動)が障害を受けるという先行研究の知見を追認した。(2)においては、サル頭部を保持するインプラントおよび大脳皮質より電気記録・刺激、溶液の微小注入を行うためのインプラントについて、従来の機能を保ちながらMRI機能画像に悪影響を及ぼさない方式を考案・作製し、さらに実際にサルに手術を施しとりつけた上で目的を達成していることを確認した。(3)について、本実験では2頭のサルをデータ取得のために用いる計画であるが、これらのサルに対しfMRI実験を行うために必要な訓練・手術を順次進行させた。
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