本研究は動物の忌避行動が外界からの刺激によって引きおこされるメカニズムを、嗅覚系をモデルシステムとして解き明かすことを目的としている。この目的のためには、嗅覚系の基礎的な構造について解明する事がまず必要である。 平成16年度は、これまで詳細に解析のなされていた一次嗅覚中枢である嗅球の背側部に加え、外側部の構造を明らかにすることに力点が置かれた。嗅球の基本単位である糸球がラット嗅球外側部でどのような嗅覚受容体を表現しているかを調べた。内在性信号の光学測定法を用いたin vivo実験により、複数の匂い刺激に対する糸球の応答を記録、同一の糸球がどの程度の範囲のニオイ分子に応答するかを決定し、嗅球学則部で表現されている嗅覚受容体の性質を明らかにした。この結果は16年6月に香港で開催されたGordon Research Conference on Molecular Neurobiologyで発表した。また、2005年2月号のJournal of Neurophysiolgyに論文を発表した。 さらに、光学測定法の実験から、嗅球外側部にはラットが忌避行動を起こす事が知られているTrimethyl thiazolineに応答する糸球が存在することが明らかになった。このことは、ラットに忌避行動を引きおこす情報が少なくとも嗅球外側部でも表現されていることを示唆する。今後は電気生理学を用い、この糸球のニオイ応答特性を明らかにする。
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