ゼブラフィッシュを用いて視物質遺伝子の発現制御機構を明らかにすることを目的として、まず視物質遺伝子の時間的空間的発現パターンを詳細に調べた。ゼブラフィッシュは吸収光波長も発現量も異なる2種類の赤型視物質遺伝子と4種類の緑型視物質遺伝子を有するが、それらの網膜における時間空間的発現パターンは未知であったため、我々は胚と成魚に対してこれら重複遺伝子の発現パターンをin situ hybridizationによって調べた。その結果、赤型、緑型ともより短波長感受型の遺伝子から順に発現が開始され、成魚では網膜の中央〜背側領域と周縁部+腹側領域で発現する遺伝子のセットが異なることを明らかにした。ゼブラフイッシュは重複した視物質遺伝子が網膜でそれぞれ異なる時間空間的発現パターンを示すことにより、成長時期あるいは視野によって異なる色覚を有するように進化したことが示唆された(雑誌論文として発表)。 次に、ゼブラフィッシュ青型視物質遺伝子(SWS2)のゲノム上における発現制御領域を探索した。様々なゲノム上流領域を蛍光タンパク質であるgreen fluorescent protein(GFP)レポーターにつないで受精卵に導入し、正負の制御領域を検討したところ、当該遺伝子が特定の視細胞種類特異的に発現するための制御領域が遺伝子近傍領域の約200bp内に存在することを明らかにした。また当該遺伝子の転写活性化領域(エンハンサー)が上流領域に複数存在する可能性を示唆した。さらにこの過程で当該遺伝子を発現する特定の視細胞をGFPにより可視化したトランスジェニックブラフィッシュを樹立した。
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